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2012年3月16日 (金)

【小説】ふたつの願い2(それぞれの願いシリーズ)

     (3)
次の日も子猫のもとにカラスがやってきた。
子猫は昨日と同じように段ボール箱の中にいた。
「まだ居る。おいっ、こんな所で何やっているんだよ」カラスが話しかけるが子猫は答えない。
「ちっ。まただんまりか。可愛くねえ」
カラスは子猫の前でまた餌を食べ始めた。
その姿を子猫はただただ見ているだけ。何も言わずに見ているだけ。
カラスは今回もまた半分だけ食べ残して飛び去った。
そして子猫は生きながらえる。カラスの食べ残しで生きながらえる。
そんな姿をはるか上空からカラスが見ているとも知らないで。
親の保護が必要な子猫に生きる術はない。
ただただ震える。怖くてどうしようも寂しくて震える。
それでも一日生きながらえた。
明日は少しここから出てみようか。

ねぐらに帰ったカラスはさっきの子猫を思い出す。
何も話さず自分をじっと見つめる姿がやけに印象に残る。
明日はどんな食べ物を持って行こうか考えながら眠った。
それが何を意味するかも気付かずに。


       (4)
子猫とカラスが出会ってから三日目は雨だった。
秋の長雨は降り出したらなかなか止まない。気温もどんどん下がる。
子猫は段ボール箱の中でただただ震えて雨が止むのを待つだけ。
意識がどんどん遠くなる。雨に体温を取られて体力も限界だった。
遠のく意識の中で黒い影と共に雨が止んだような気がした。
どこかで聞いた事のある声が聞こえた気がしたけれどそのまま意識を手放した。
子猫はほんわかとした温かい夢を見ていた。母親のぬくもりに包まれた幸せな夢。


      (5)

子猫との出会いから三日目の朝カラスが目を覚ますと雨がしとしとと降っていた。
「雨だ。濡れるのは勘弁」このまま寝て過ごす事に決めた。しかし眠気は一向に訪れなかった。
それどころか気持ちがざわついて落ち着かない。
「あぁ、もう!何でこのオレがあんな薄汚いネコが気になるんだよ!ちくしょう・・・」
どこにぶつけたら良いのかわからない感情そのままに子猫のもとへ飛んで行った。
子猫は小さく丸くなって箱の片隅で雨に打たれながらぶるぶると震えていた。
「おいっ。目を開けろ!」子猫からの反応は無い。それどころか命さえも危ない状態だ。
「こんな時どうすりゃいいんだよ!えぇっと、そだ。まずは雨を防がないと。寒いのか?寒いんだよな?」
おろおろとしながらも羽を広げて雨を防ぎ、子猫の身体に寄り添い体温を与える。
(はあぁ。オレ何やっているんだろうな)

ようやく雨が上がった。
にゃあ。
子猫の声が聞こえた。カラスは自分のしている事が急に恥ずかしくなり
「おっ、気がついたか。お前大丈夫かよ」
それだけ言うのが精一杯で慌てて飛び去った。
しかしカラスは心の中がぽかぽかするのを感じていた。
今まで感じたことのない気持ちを味わっていた。
そして明日も子猫に会いに行こうと思ったのだった。

                      続く…

*****
「ふたつの願い」次回が最終話です。

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