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2012年3月17日 (土)

【小説】ふたつの願い3(それぞれの願いシリーズ)

     (6)
子猫が気がついた時に感じた温もりは雨がやむまで傘の代わりをしてくれたカラスの温もりだった。
いつの間にかカラスに対する恐怖心は無くなっていた。
そして子猫は生きながらえた。

この時を境に子猫は強くあろうと必死になった。
いつまでも震えているだけじゃだめだ。
鳴いて寂しいと訴えているだけじゃだめだ。
お腹が空いたらエサを探そう。寒かったら風を凌げる場所を探そう。

次の日カラスはそんな姿の子猫を見て何かを感じたようだ。
決して素直では無かったけれど子猫が生きていける力をつけるためいろいろ教え始めた。出来る事には手を貸さなかった。
ただ一つを除いては。

子猫はどんどん成長した。半年も経った頃、子猫は子猫じゃなくなった。
立派とは言えないまでも大人へと成長した。
もうカラスの手を借りなくても独りでも生きていけるだけの力を付けた。
カラスは自分の体とそう変わらない大きさの白ネコになっても止められない事があった。
これを止めてしまったら自分の中で何かを失うような気がして止められなかった。
そして今日もカラスは半分だけ自分の餌を残して飛び去った。残された餌は白ネコがこっそりと食べる。
カラスが飛び去るのを見届けてからこっそりと。それを上空からカラスは見守る。


      (7)
白ネコとカラスが出会ってから一年が経とうとしていた。
その頃からカラスは自分の体調の悪さに気づいていた。
カラスは白ネコの元へ行く回数が日に日に減っていく。
真っ直ぐに飛べない、飛ぶと胸が苦しい。
そんな中、一週間ぶりに白ネコの元へ行った。餌を食べて飛び立つだけの行為。
それすらも必死だった。今回も半分だけ餌を残して飛び去る。

苦しい。もう飛び続けることが出来ない。限界だった。
気がつけばそこは初めてカラスが白ネコに出会った場所。

「あぁ、懐かしいな」

そこに段ボール箱はすでに無い。
カラスは空から落ちるようにそこに降りた。再び飛び立てる体力は残っていない。
だんだん意識も遠くなる。
そんな中考えるのはやっぱり白ネコの事。勝手に世話を焼いて勝手に幸せを感じていた。
自分のために白ネコに関わった。
白ネコといると楽しかった。
自分が必要とされているようで嬉しかった。
もう自分はだめだろう。だけど白ネコは独りでもしっかり生きていける。
そう思うとやっぱり幸せだった。
心は満たされていた。
気になるのは自分の死をどう思うだろう。
突然いなくなった自分を心配してくれるだろうか。忘れてしまうだろうか。
それでも構わない。白ネコが生き続けてくれるなら。

『どうかあの子が幸せでありますように』

眠るようにカラスは目を閉じた。風がカラスの身体を撫でつける様に労るかのように吹いていた。


      (8)
白ネコはカラスの姿を最後に見た日、なぜか不安を覚えた。
いつもと変わらない風景だったのに何が違ったんだろう。
飛び去る姿をいつまでも目で追っていた。
白ネコはとうに気づいていた。初めて雨に降られて震えているしかなかった自分。その時に気がついた。
カラスがわざと餌を半分残していく理由。でも何故自分で餌を捕れるようになってからも続いているんだろう。
カラスは何も言ってはくれない。

カラスが現れない。昨日も今日も。どうして?そんなことを考えているうちに一週間が過ぎ十日が過ぎる。
とうとう1カ月が経ってしまった。
白ネコはカラスを探した。探したけれどどこにもいなかった。来なくなった理由を白ネコは知りたいと思った。
何故何も言わず現れなくなったのか。
少しずつ探す範囲を広げ、気が付けば自分が捨てられていた場所にたどり着いていた。
探し始めて半年。やっと白ネコはカラスを見つけた。

白い骨になってしまっていたカラスを。

白ネコは「にゃあ」と一言だけ鳴いた。
その夜カラスの傍で眠った。次の朝白ネコはそこにいなかった。
夜になるとどこからともなく現れてカラスの傍で眠る。
カラスは独りで寂しくなったのだろうか。寒くなかったのだろうか。何故独りで逝ってしまったのだろうか。
何故自分は気づいてあげられなかったのだろうか。独りの寂しさを誰よりも知っていたはずなのに。
白ネコは願った。空に向かってどうか一つだけお願いを聞いてと。

『ありがとうと伝えて。僕は幸せだったと伝えて』

白ネコは空に向かって一声だけ鳴いた。
そして今夜もカラスの傍で眠る。    
                            了

*******
「ふたつに願い」これで完結です。
ここまでのお付き合いありがとうございました。
この作品は私の核になっています。原点というか、振り返らないといけないものというか…。
赤っ恥ものの稚拙な文章ですが、いかがだったでしょうか。

白ネコのその後もありますが、ここにアップするかどうか検討中…。

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コメント

動物の死を書いてあるものは苦手だ
読んでいられなくなる・・

pooさん

書いてる本人も涙ボロボロ状態でしたよ。
でも死は生あるものすべてに訪れるものという意味合いもあり書かせて頂きました。

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