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2012年4月 4日 (水)

【小説】森に住む白いクマ

 この世界のどこかに森に住んでいる白いクマがいると言う。
遠い昔氷の国からやってきた。
世界がどんどん暑くなってきた時、氷の世界はどんどん小さく狭くなったため住めなくなってしまった。
何年も何年もかけて住む場所を探し続けようやく落ち着いた先がこの森だった。

年月が過ぎとうとう最後の一頭になってしまった白いクマ。
自分の祖先がどこに住んでいたかもわからないくらい時が過ぎていた。

何故自分だけが白いのか、何故こんなにも冬がうれしいのかこの白いクマは分からない。

そして今年もまた雪の降る季節がやってきた。
自分以外のクマはこの寒い時期冬眠をしてしまうため一人ぼっちで過ごす。
一人ぼっちでも全然寂しくは無かった。

だって待ちに待った季節だったのだから。
心が踊り狂うくらいうれしい季節がやってきたのだから。

気がついた時には自分は一人だった。
親がどこに行ったのか分からない。
この森は白いクマに優しかったから生きる事が出来た。

この森に雪がに深々(しんしん)と降り積もる。
白いクマはその景色に溶け込む。
まるで初めからそうあったように。

両手を広げ雪を受け止める。
掌に落ちてはすぐに無くなる白い雪。

一瞬垣間見える結晶を白クマは何度も何度も見ていた。

この結晶をたくさん集めることができたらどんなに良いだろう。
たくさん集めていろんな葉っぱの上に飾ったらどんなに綺麗だろう。

すぐに消えてしまう雪の結晶に何度も何度も手をかざす。

白白白。
自分と同じ白。
この寒さが心地良い。
この冷たさがうれしい。

いつの間にか白いクマは踊りだしていた。
くるくる回ったり両手を広げて寝転んだり。

ここは白いクマだけの世界。
1年でほんの少しだけ神様に与えられた白クマだけの氷の世界。

どうしてこんなにもこの世界が愛おしいのかその理由(わけ)を白いクマは分からない。
どうしてこんなにもこの世界が恋しいのかその理由(わけ)を白いクマは知らない。

この世界のどこかに森に住むという白いクマは遠い昔は氷の世界に住んでいたと言う。

*******
2011年2月週刊ドリームライブラリに掲載して頂きました。

この話を思いついた発端としては、北極や南極の氷がどんどん小さくなり、流氷自体も小さくなりつつあるということを聞いたからかな。
アザラシなどが氷の小ささに生きてくことが難しいとか。
氷が無くなってしまったら陸で生活出来るように進化するのでしょうか。

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コメント

ある種のペンギンは、
体温が上がると氷を食べて調節するそうです。

南の方に迷い込んできたペンギンが、
その習性に従って食べたのは砂(氷なんて無いから)。
胃の中が、砂や小枝などの異物で膨れ上がり、
ぐったりしてしまった時に、人の手で助けられ、
南極観測船に乗せられて無事故郷に戻りました。

温暖化が止められないならば、
生物が少しでも対応出来る可能性が高くなる様に、
少しでも緩やかな速度であればと思います。

かえるさん

そっか氷を食べて体温を下げるなら氷は絶対必要な物ですよね。
助けられたのはきっと氷山の一角にすぎないのかもしれません。
自然破壊をするのは人間だけなのでその責任はきっと人間にかえって来るのでしょう。

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