三題話を書きました
週刊ドリームライブラリにて掲載されています。
三題話「ひつじ」「雪」「流行語」を使用して作成。
流行語は ・ありのままで ・いいじゃないの~ ・ダメよダメダメ
から一つ使う事。
「十二支プラスニャン」をよろしく~♪
↑
直リンクをしました。
週刊ドリームライブラリにて掲載されています。
三題話「ひつじ」「雪」「流行語」を使用して作成。
流行語は ・ありのままで ・いいじゃないの~ ・ダメよダメダメ
から一つ使う事。
「十二支プラスニャン」をよろしく~♪
↑
直リンクをしました。
あの、初めまして。悟と言います。27才です。
私の話を聞いて頂けますか?その後で感想を聞かせてほしいのです。
あれはとても蒸し暑く座っているだけでじっとりと汗が出てくるような夏の夜でした。
その日はいろいろと間違えたんだと思うんです。
仕事帰りにいつもの駅で見たポスター。
普段なら素通りしているはずなのについ目に止めてしまったのが最初の間違いでした。
その駅の近くで行われる花火大会のポスターで日付は目に止めた日だったのです。
帰ってもすることが無かった私は気まぐれにその花火大会に行くことにしました。
少しだけ見てすぐ帰るつもりで。
花火大会に行く人が駅から吐き出されていく中、人波に乗って自分も移動しました。
花火の打ち上げ場所が近づくにつれ屋台の数も増えていき目や鼻を楽しませてくれました。
いろいろな屋台の前を通り過ぎていくと視界に赤いものが目に入りそちらに顔を向けると10歳くらいの女の子が佇んでいたんです。真っ赤な浴衣を着た子でした。
親とはぐれてしまった迷子かと思ったので声をかけたんです。
そう、いつもならそんなこと他の誰かに任せるのに。それが二つ目の間違いでした。
「迷子?」と一言だけその女の子に聞いてみました。
女の子は一瞬びっくりした表情を見せましたがすぐに小さくうなずきました。
喉が渇いているかと思い屋台でかき氷を買ってあげました。
表情の少ない子でしたが喜んでいるようでした。名前を聞いたらミカと教えてくれました。
二人で花火を見るためになるべく空いている場所を目指していると小高い場所に寺があるのを見つけたので、そこなら少しは空いているかと思いそちらに足を向けました。
寺へ続く階段の両側にはお地蔵様がびっしりと並んでいました。
所々に蝋燭で明かりがともされていたため暗さはそれほど気になりませんでした。
気になったのはお地蔵様が並んでいた事で、何となく薄気味悪かったのを覚えています
ミカを見ると怖がる様子もなく私に警戒するわけでも無く大人しく着いてきます。
階段を上りきり寺へ入ってみると思いの外明るくて花火を見に来たであろう人も居たことに安心しました。
花火ですか?綺麗でしたよ。それはもう見事なものです。
寺の住職がいつの間にか私の横に来て一緒に花火を見ていました。
住職が私に聞くんです。
「今日はどうしてここで花火を見ようと思いましたか?」って。
だから答えました。
「ここへ来る前に迷子の女の子を見つけたのでなるべく人の少ない所で花火を見ようかと思ったんですよ」と。
「はて?その女の子というのはどの子ですかな?」と妙なことを聞いてきたんです。
「この子です。ミカと言って赤い浴衣が似合ってますよね」と自分の後ろにいるミカを指さして答えたんですがね、どうも住職の様子が変なんです。
「そうですか。あなたがミカをここまで連れてきた来て下さったのですね。この子は不憫なこでしてね、普通の人には見えません」
私は何を言われているか分からなくて周りを見渡したんですが、くもの子を散らしたように人っ子一人居なくなっていたんです。
「あなたにはミカが見えた。それはこの子にとっては幸運だったのでしょう。この子はね、3年前の花火大会の日に事故にあって亡 くなったんです。お母さんに浴衣を着せてもらってはしゃぎ過ぎたのでしょう。誤って道路に出てしまったところに不運にもトラックが…。浴衣は真っ赤に染まっていたそうです。よほど楽しみにしていたのか成仏出来ずに苦しんでいる。この子の母親も悲しみのあまり体調を崩して寝たきりになってしまいました。時々空を見つめて亡くなった子どもに語り掛けていることもあるそうです」
私はその話を聞いて背後にいるはずのミカを振り返りました。真っ赤な浴衣を来た少女は少しだけ笑っているように見えました。
「私には普通の少女にしか見えません」と思わずつぶやいてしまいました。だってそこにいるのに、実際そこにいて私の買ったかき氷を食べてここまで一緒に歩いて来て一緒に花火も見たのに。いつの間にか私は泣いていました。悲しくて寂しくて可愛そうで。
ミカに話しかけました。
「ミカ、君はこれからどうしたい?ずっとここに留まりたい?それとも成仏してお空へ行きたい?私は今日の事は決して忘れないよ。もし生まれ変わったら私に会いに来てくれるかい?その時はまた花火を見てかき氷を食べよう。君のお母さんも苦しんでいるよ。君を助けられなくてずっと後悔しているんだと思う。だから少しだけお母さんを楽にしてあげよう」
心地よい読経が耳に入ってきました。
すると今まで表情が乏しかったミカが満面の笑みを浮かべていました。
あぁ、この子は笑うとこんなに可愛かったんだ。
思わず抱きしめました。でも体温も無く、すぐに眩しい光に包まれてミカは消えてしまいました。
そこまでで私はどうやら気を失ったか眠ってしまいました。
気が付いたら自分の部屋のベッドで次の朝を迎えていたのです。
気になってミカと一緒に花火を見た寺へ行ったのですが、そこには寺なんてありませんでした。
引き返そうと思い歩き出すと足に何か当たりました。
あの日ミカに買ってあげたかき氷に付いていたストローでした。
確かにそれが私が買った物じゃないのかもしれません。でもそれを見たときミカの笑顔が見えた気がしたのです。
これは本当に私自身が体験したものだったのでしょうか。
それとも夢だったのでしょうか。
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いつもお世話になっている週刊ドリームライブラリ での三題話です。
お題は「くも」「かき氷」「背後」。
いかがだったでしょうか
枯渇に入らずんば文字を得ず
いやあ、最近本当に書けないですねえ。
別に書かなくてもいいだけど、でもなんでだろうねえ、課題を出されるとやりたいと思ってしまうわけで…。
今回の三題話は固定が2つ「ウマ」「秘密」。
流行語の「じぇじぇじぇ」「今でしょ」「おもてなし」「倍返し」の中から一つというものでした。
もんもんと考えましたよ。登場人物やらバックグラウンドやら。
おぼろげ~に映像も浮かぶもののそれが文字にならない。
つかみかけたと思ってもポロポロと零れ落ちていく感じでちっとも文章にならず思いっきり締切を過ぎての提出でございました。
枯渇状態ですなあ。潤いが欲しい(笑)。
そんなこんなで書き上げた作品がこちら 。
今なら更新履歴からすぐ入れます。
ずずーっと下にスクロールしていただければ三題話研究の「ウマ」「秘密」「流行語」のバナーがあるのでそこからお願いします。
週刊ドリームライブラリにて現在三題話公開中です。
更新履歴からたどるか、ページの真ん中よりチョイ下の<三題話の大研究>にある「ヘビ」「花粉症」「打ち出の小槌」のバナーよりお入りください。
他にも私の作品達が居りますのでよろしければ寄って行ってくださいませ。
三題話を書くのは好きですが今回の場合「打ち出の小槌」をどう使うか悩みました。
これだけとびぬけて特殊なものでさりげなく文章に入れるにはどうするのかいろいろ考えました。
この考えている時間と言うのも楽しいのですが、なかなかの苦戦でしたねえ(^_^;)。
出来れば1000字くらいで、と思っていましたが実際は1400字くらい。
取りあえず宣伝です(笑)。
左のリンクカテにある週刊ドリームライブラリにて三題話を募集しています。
サイトに行って貰うとフェイスブックで詳細が分かるようです。
私自身はフェイスブックを利用していないので見ておりませんが(^^ゞ。
25日締め切りです。
お題は「ヘビ」「花粉症」「打ち出の小槌」の3つ。
この3つの言葉をストーリーの中に使います。
ちなみにヘビはカタカナでお願いしますとのこと。
本日私も編集長さん(管理人さん)に提出しました。
だいたい1400字くらいだったかな。
短いストーリーの中にこの3つを埋め込む醍醐味、面白いです。
興味をもたれた方は一度覗いてみてください。
私は居心地がいいのでよく行っています。
で、まあ、物事には基礎が大事ですよねえ。
ちょっと私もストーリーを創作するのに勉強しようかなあと思っております。
自分の栄養剤的な物として頑張ってみるつもりです。
1年後の成長が楽しみです。
続けられれば…。そう、続けることが大事。
続けるぞーっ!明日から(¬¬)
「良い子にはプレゼントをあげよう」
赤い服を来た恰幅の良い白ひげを蓄えたおじいさんは言いました。
喜ぶ子ども達の顔を見たサンタは満足そうに何度も頷いています。
ここは小さな子が集う広場。
今日はクリスマスイヴ。
クリスマスにプレゼントが欲しい子は皆一様に良い子を演じています。
「今日はママの手伝いをたくさんしたよ」
「早寝早起きをしたよ」
「下の子の面倒を一日中がんばったよ」
子ども達は心の中でプレゼントが貰えますようにと必死で訴えかけます。
そんな子どもの心の中を覗いているサンタクロース。
「さて、どの子にプレゼントをあげようか…。ルドルフはどう思う?」
問いかけられた赤鼻のトナカイはため息をつきながら言いました。
「すべての子にあげれば良いのではないですか?」
それを聞いたサンタクロースはとんでも無いと言うように首を横に振ります。
「何を言っているんだ。良い子にしかプレゼントは渡せないよ。悪い子にはプレゼントはあげない」
「あなたの言う良い子とはどんな子なんですか?すべての子が良い行いばかりではないでしょう?子どもは得てして残酷な部分を持ち合わせているのだから」
「そうだね。その残酷さが私は大好きなのだよ。ほら、あの子を見てご覧。毎年プレゼントを貰えなくて拗ねている。どうやら私はただのケチなおじいさんと思われているね」
「だからすべての子にプレゼントをあげればそんな事思われなくてすむじゃないですか」
「分かってないねルドルフは。私は子どもが持つ残酷さも好きだけどね、私が何より子どもに残酷な事をするのが好きなのさ」
そうして毎年クリスマスにはサンタがより好みしたサンタにとって良い子にプレゼントを配るのでした。
「良い子には来年もプレセントをあげよう」
ルドルフはため息をつかずにはいられませんでした。
ちゃんちゃん♪
おしまい・・・。
********
こんな駄文をお読み頂き恐縮です。
何故サンタはいつも「良い子には」プレゼントなんでしょうねえ。
こんな日くらいすべての子にあげれば~?と思ったりもしたりして。
もしかしたら改心する子が出てくるかもしれないじゃん(笑)。
で、クリスマスの夜に煙突からこっそり子どもの枕元にプレゼントを置く訳だから子ども自身がプレゼントに気づくのは今日26日ってことでいいのかしら??
まだ朝靄がけぶる中一匹の小柄な白ネコが川沿いを歩いていた。何か目的があるのかその足取りに迷いは無い。
少し薄汚れている胸元には小さな骨がぶら下がってる。
ふと白ネコが何かに気付いたようにその足取りを止めた。周りを見渡す。
ここは自分が幼い頃捨てられていた場所。寒さと恐怖に震えた記憶が蘇った。と同時に温かい記憶も蘇る。初めて生き抜く事を教えてくれたカラスとの出会いの場所。
そこに自分が捨てられていた段ボール箱は無い。あれから5年の年月が経った。
じっと動かなくなった白ネコは遠い目をしていた。少しもの想いに浸っていたようだ。
自分が捨てられていたのとは反対の季節だというのに時折吹く風の中に良く似た空気の匂いがそうさせてしまった。
白ネコは我に返ったようにまた歩き出した。
しかしやはり何かが気になるのか何かを探しているようにも見える。少し坂を下り川に近づいていく白ネコ。
つゆ草が生い茂った影に親からはぐれたのだろうか一羽の鳥の雛が羽根をばたつかせ、か細い声で鳴いていた。
しばらく自分を見上げてくる雛を睨みつけ白ネコは問いかけた。
「生きたいか?生きたいなら僕についておいで。それともここでのたれ死ぬ?」それだけを言うと白ネコは雛に背を見せ再び目的地へと足を向けた。
雛はしばらく考えたが意を決したように細い2本の足で転がるように白ネコを追いかけた。雛が初めて自分の意思を持った瞬間だった。
必死で置いて行かれないようまだ飛ぶことのできない未熟な羽をばたつかせた。
それでもどんどん距離が離れていく。そんな無防備な雛はいつ他の動物に狙われるかもしれない。当の白ネコに食われてしまうかもしれないのに。何かにすがるように雛は白ネコを追いかける。とうとう白ネコの姿が見えなくなってしまった。もう足は疲れ切って動けない。ピーと一声鳴き白ネコが行ってしまった方角を見つめていた。再び孤独になってしまった雛。空にはそんな雛を狙うトビが旋回していた。
それを感じた雛は恐怖で足がすくみながらも隠れる場所を探す。探す事に気を取られていて周囲に意識が行かなかった。
いきなり後ろから自分の身体を咥えられ地面が飛ぶように流れるのを見て絶望感を覚えた。
それでも必死でもがき逃れようと足や羽をばたつかせる。助けて助けてっ。やだやだっ。
無我夢中で暴れる雛はつい今しがた自分に問いかけた声を聞いた。
「静かにして。落ち着いて。暴れたら落してしまう。あいつに食われたいの?」
もしかしたら自分を食べてしまうかもしれない白ネコの声を聞いて安堵する自分が不思議だった。
白ネコは川沿いをしばらく走ると突然止まり雛を地面に落した。落した雛には目もくれず一点を目指して歩きその場へ座る。追いかけていいのか分からず雛はその場所から動けない。
そこは子猫だった自分と一緒に過ごしたカラスが死んだ場所。
ただの土と化してしまったカラスのお墓。
一点を見つめる白ネコの背中は寂しそうだ。
雛はそっと白ネコに近づき横に並んだ。白ネコの顔を窺っていると突然後ろから声がかかった。
「やあ、白ネコ君。お墓参りかい?…ってその横に居るのは君の食糧…なのかな」終わりになるほど声に戸惑いが混じる。
白ネコは雛を咥え、人間の前に置きその場を後にして歩き出した。
人間はその背中を見送りしゃがみこんで雛を観察する。
「僕が触ったら親鳥が来ないかなあ。でもすでに猫の匂いがついてるからやっぱり来ないかも。僕にどうしろっていうんだよ、ネコ君。もしかして骨を黙って持ち帰った時の腹いせかい?ねえ、雛君。僕の所へ来るかい?」一人ごと言っているようにしか見えない人を雛は不思議な顔で見上げている。
「雛君、君は生きたいと思ってる?そうならその手助けをしようじゃないか。僕の家に帰ろうか」雛は人間の手の中に大人しく収まった。
「まずは何の雛か調べないとね」そう言いながらその場を立ち去る人間。
ずっとここにあるカラス。白ネコの原点がここにはあった。
それから数カ月後、白ネコは雛と再会した。それはいつもの散歩中のことだった。
「おーい、白ネコ君。久しぶりだね。こいつを覚えているかい?立派になったろう?」と人間の肩に止まっている黒い鳥。
驚いた白ネコは思った。これはカラスのいたずらだろうか?
そんな事を思っていると突然人間の肩から飛び立った鳥が白ネコの背中に乗った。追い払おうと動いた瞬間羽を広げ宙を舞う。再び背中に乗ろうとするのを阻止する白ネコ。傍から見たらただのじゃれあいにしか見えない。白ネコは心の隙間が少しずつふさがったような気がした。ずっと何かが足りなかったものが満たされたような温かいものが流れてくる。
その日以来、ネコの集会場には1羽の若いカラスが混じるようになった。いつも白ネコの傍から離れずいるくせにいつの間にかどこかへ消えていくカラス。
「やあ!白ネコ君とその仲間たち!」と声をかける変な人間も健在だ。
少し違うのはその人間の肩にカラスが居たり居なかったりすることだ。
通りすがりの車のラジオから聞こえるのはスカイツリーの話題。
白ネコは思った。いったいどんな木なんだろう。てっぺんに登ったらカラスが逝ってしまった空に少しは近付けるかもしれない。だったら一度見てみたい、そう思いながらまどろんでいた。意識が夢の中に入る瞬間どこかでカラスの鳴き声と懐かしいぬくもりを感じた。
2012年5月26日
*******
週刊ドリームライブラリでの三題話です。
「つゆ」「坂」「スカイツリー」。
ちょいと強引に言葉を使った所はありますが、願いごとシリーズ第4弾であります。
自分の中ではこの白ネコが死ぬまで書きたいと思っているのですがなかなかそうはうまくいきませんね。
感想など頂ければ幸いでございます。
季節は新緑が似合う時期を過ぎ、木々が赤や黄色と自己主張をし始めた頃のお話。
山のどこかで松の木母さんの声が聞こえた。
「さあ、坊やたち。これからかくれんぼを始めるよ!頭は絶対出しちゃだめ。頭を隠したい子は落ち葉を頭にかぶせときな。ほら足音がそこまで来ている。大人しくするんだよ」
カサカサと足音と共に今年も松茸を探しに人間がやってきた。
子ども達はわくわくと身を潜める。
毎年同じお爺さんが腰を曲げながら松茸を探しにやってくる。
本当に必要な分だけ捕っていく。そして松の木を見上げいつも声を掛けてくれるのだ。
「松の木よ、今年も豊作かい?お前の周りには毎年たくさんの松茸があるから助かるよ」
それに応えるように風が松の葉をザザーッと揺らす。
「どれ、この辺りかな」と一つ松茸を籠に入れる。「わあ、見つかっちゃったあ」楽しそうに籠の中で騒ぐ。子ども達が籠の中でぎゅうぎゅうと身動きできなくなる頃、お爺さんは痛む腰をトントンと叩き帰り支度をする。
「松の木よ、今年はこれだけ頂いて行くよ。また来年も頼むよ」そう言いながら松の木を軽くポンポンと叩き山を下りていく。
昔松の木はこのお爺さんに傷ついた枝を治療して貰った事があった。その翌年からこのお爺さんにだけ松茸を分けているのだ。可愛いわが子をこの人になら渡せると思いながら。
根元にいる虫達は「今年の秋もそろそろ終わりだね」などと冬支度に忙しい。
もうすぐ冬がやって来る。お爺さんが歩いた山肌には雪化粧。
一面真っ白になるだろう。季節は巡りやがて春になり眩しい日差しの夏を迎える。着々と時は過ぎまたかくれんぼの秋がやって来る。
きっとお爺さんはまた話しかけてくれるだろう。
「松の木よ、今年も豊作かい?」
「また来年も頼むよ」と。
はい、来年も再来年もあなたが来て話しかけてくれるならお待ちしています。子ども達とかくれんぼをしながら。
そう季節の風に乗せた。
********
2011年秋の作品です。
これも三題話から出来たものです。
お題は「マツタケ」「化粧」「虫」。
ちなみに一番最近の作品は
週刊ドリームライブラリの「それでも大好き」があります。
ほんのちょっと昔、公園の噴水に仲良くカメと魚が住んでいました。
2匹の会話はおしゃべりな魚が寡黙なカメに話しかけることで成り立っていました。
寡黙なカメはしゃべらないからと言って何も考えていない訳ではありません。
その反対にいろいろ頭の中では考えているのです。
よだれをたらしもぐもぐと口が動いている時は美味しい事を考えているのでしょう。
時には鼻の下をでれ~っと伸ばし心なしか赤面していたり。
それを見た魚は囃したてたり笑ったりしていたのでした。
ところが今日のカメはいつもと違います。
何やら難しい顔をしていつものゆるい顔が見当たりません。魚が話しかけても答えが返って来ない。それはいつもの事なのだけれどどうにもいつもと様子が違う。いつもふらっと行く散歩から帰ってきてから表情が硬いのです。
誰かこの事を知っている者はいないかと防水携帯を取り出しアドレスを呼び出しました。
「!。そうだそうだ。この公園で一番高い木に止まっている鳥達に聞いてみよう」
アドレスから呼び出し電話をかけました。
「もしもし?一つ聞きたい事があるんだけど、良いかな。散歩から帰ってきてからのカメさんの様子がおかしいんだ。何があったのか知ってる鳥さんは居ないかな」背後で鳥達の鳴き声が響き渡っています。
しばらくして返ってきた言葉は「もしかしたら人間達にいじめられたからかも」という衝撃のものでした。カメさんがいじめられてる?多少いや、かなり抜けていると思うけれどそこが可愛いんじゃないかと思う魚でした。
次の日も散歩から帰って来たカメの表情は硬いものでした。
次の日も次の日も。水の外に出られない魚は歯がゆい思いをしていました。
いつも噴水の近くにある橋の上で甲羅干しをしているらしいカメはそこで人間達に棒で突かれたりひっくり返されたりしていると鳥達から聞いているのです。
でもカメさんはその事を一切口にしません。
どうしたの?と聞いても寂しそうな顔で笑うだけです。
魚の心はもやもやとして形作られる事のない不快感だけが増していきます。
何とかして元のカメさんに戻してあげたい。
思い出し笑いしたり美味しいものを考えたりして欲しい。
魚は毎日いつも通りカメに話しかけます。
「僕にはたくさん好きな物があるんだよ。青い空でしょ。時々出る虹も。いろいろな情報をくれる鳥達には感謝してるし、夜水に映った月も綺麗だよね。みんな僕の好きなものさ。だけどね一番好きなのはカメさん、君だよ。君だけがずっと僕の傍に居てくれるし何より僕の話を最後まで聞いてくれるから大好きな友達だよ」
するとそれを聞いたカメの目から大粒の涙が次から次へと流れました。好きという言葉が鍵だったようです。
何度も何度も頷きながら涙を流すカメと魚も一緒に抱き合ってわんわん泣きました。
その時初めてカメは気付いたのです。
自分のことをこんなにも心配してくれる大切な友達の存在を。どれだけこの大切な友達に心配をかけていたのかを。
それからのカメさんは徐々にいつもの表情になっていきました。
時々思い出し笑いをし、でれ~っと鼻の下を伸ばし、もぐもぐと口を動かしたりしています。
そんなカメをみて魚は一緒に笑ったり囃したてたりと愉しく毎日を過ごしました。
いじめた人間?どうやら鳥達が退治してくれたようです。
おしまい。
*********
これは9題話とでもいうのでしょうか。
9つのダイスを振って出た絵柄でストーリーを作って行くというものです。
週刊ドリームライブラリの編集長さんから、童話や寓話的な話をという課題を頂き挑戦してみました。
最近いじめ問題が表ざたされてきたので少しだけそういうことも入れました。
『それは10歳の幼い少女に突然起きた出来事。
少女は両親の自殺を目の当たりにしてしまった。それは彼女をどす黒い暗闇に落ちるには十分すぎた。
この瞬間から少女は白い天井と白い壁に囲まれた部屋の住人になり、心を閉ざしいつも傍にいた大好きな少年の声も少女には届かない。
恵まれすぎていた事に気付く事無く育った少年は途方にくれ戸惑うまま少女の傍に居る事しか出来ない。
笑顔を無くしてしまった少女に再び笑って欲しくて毎日少女の元へ訪れた。
少女が好きなお菓子を持って行ったり楽しい話を聞かせたりしたけれど何の反応も見せない少女。
そんな日が1週間続き10日続き1カ月を過ぎる頃少年は少女の元へ行けない日が訪れた。少年は思った。
きっと今日一日くらい行かなくても何も変わらない。だから無理して行かなくても良いやと。そして次の日少女の元へ訪れた時、昨日ここへ来なかった事の大きさに気付く事になった。
少女は少年の顔を見た瞬間少しだけ頬をほころばせそして寂しそうな目を見せたのは一瞬。その一瞬の表情の変化を読み取った少年は思い知らされた。この少女には自分以外に会いに来てくれる人はいない。
両親でさえも会うことは二度と無い。孤独と戦っている少女。それに引き換え自分はどうだろう。忙しいなりにも愛情を注いでくる両親を持ち、学校には友人、家に帰ればくつろげる自分の部屋だってある。少女はそれを一度に全部無くしてしまったのを知っていたはずなのに。
それなのに自分は友人と遊びに行き、ここへ来る事も面倒になり寝てしまったのは昨日の事。自分がここを訪れる事を少女はずっと待っていてくれていたに違いない。掴みかけていた手を自ら離してしまったのだ。少年は改めて思う。この少女の笑顔を取り戻すのは自分だ。そして二度と寂しそうな目をさせてはいけない。どれだけの年月がかかっても良い。
ここへ来なかった自分の愚かさを償いたい。
大好きな少女の笑顔をもう一度見たいから』
そんな二人にも平等に年月が過ぎ大人へと成長していった。
かすみが倒れてから10日経った頃母親に呼び出された。
「かすみちゃんに会わせてあげるわ。だけどあまり刺激しちゃだめよ。まだ完全には回復していないけど後はかすみちゃん自身が乗り越えないといけないのよ。30分後に戻って来るからくれぐれも逸らないでね。まずは彼女の話を最後まで聞く事。分かった?」そう念を押して霞の家を出た母親の背中を見送った。
ソファに俯き座っているかすみ。向かい側のラグに直接腰を下ろした。どう声を掛けようか迷っているとかすみから話しだした。
「子どもの頃、突然病室に居る自分に気がついたんだ。それまでは頭の中に霧がかかったみたいにはっきりしなくて怖かった。
だけど毎日欠かさずいろんな話をしに来てくれた男の子が居てね、自分でも気付かないうちにその子が訪ねてきてくれる事を楽しみにしてたみたいだ。
自分が病院のベッドの上だって気がついた日もずっとその男の子が来るのを待ってたよ。いつもは何時くらいに来てたんだろう、夕飯を食べる前だったかな後だったかななんて考えながらずっと待ってた。
でもその日、男の子が私を訪ねてくれる事は無くて、また私は置いて行かれたんだと思った。毎日来てくれていた男の子は本当は居なかったんだって。自分が見せた願望だったんだって思った。これから自分独りでどうしようって子どもながらに考えたよ。
どうしてお父さんもお母さんも私を連れて行ってくれなかったのかなって。要らない子だったのかなって。
でも次の日にその男の子が顔を見せてくれてうれしかったんだ。その男の子って薫だよね。ずっと傍に居てくれたんだよね。気付けなくてごめんね。
でも私は大丈夫だよ。もう私に関わらなくても良いよ。きっと今までずっといろいろ邪魔しちゃってたんだよね。
休みのたびに私の所に来てたんだもの。これからは自分のために休みを使ってよ。今までありがとう。疲れたから寝るね」
一方的に話しかけられ返事を聞きたくないとばかりに寝室に戻ってしまった彼女を呆然と見送る事しか出来なかった。何の言葉も掛けられない自分が情けない。
最後の方は声が震えていたのに。
「ただいま。あら?一人?」突然明るい声が背中にかかる。
「あ…疲れたから寝るって寝室に戻った」それだけ言ってこの部屋を出た。
もう一度よく考えなくては。自分はどうしたいか、どうしたら良いのかを。
それから2週間ほど経った休日にボストンバッグを持った母親が自宅に帰って来た。
驚いている俺の顔を見るなり「かすみちゃんに追い出されちゃったわ」とあっけらかんと笑顔を見せる。
一瞬何を言われているか理解出来なかったがその言葉の意味が浸透してきた時には母親は自室で荷物の整理をしていた。
「追い出されたってどういうことだ?」と聞いても「う~ん。言葉通りよ。これでも粘ったのよ。でもかすみちゃん自身が一人でも大丈夫って笑ってくれたの」
「だからって…」最後に見たかすみの顔が忘れられない。あんなにも何かに耐えるようにして今にも折れそうになっていた彼女だったのに。
知らずと下を向いて床を睨んでいた。
「もっとかすみちゃんを信じてあげなさい。あの子はあの時の小さな女の子じゃないわ。少しずつ少しずつひとり立ちしようと努力しているのよ?それを助けてあげなさい。」
俯いていた頭の向こうからそんな言葉が降ってきた。ハッとして顔をあげると真剣な目をしてこちらを向いていた母親と目があった。
「かすみちゃんはね、確かに精神的に弱い部分を持ってるわ。あんな悲しい出来事があったのだから誰だって臆病になると思うの。きっとまた身近な人を失う恐怖心を人一倍持ってると思うのよ。そんな彼女にしてあげられる事って何かしらね。可哀想と思う事?外に出さないように囲う事?違うわよね。よく考えて答えを見つけなさい。それと、今まであなたがしてきた事にもっと自信を持つことね」それだけを言うと再び荷物の整理をし始めた。
その姿をしばらく見ていたが何となく頭にかかっていた靄が晴れたような気分になり母親の部屋を後にした。
そうだ。結局は大それたことなんで出来やしない。自分の今出来る事をするしかないんだ。
かすみ本人も言っていたじゃないか。俺のために休日を使えって。
自分の休日を好きに使おう。
とある休日。とある家のインターフォンが鳴り響いていた。
ピンポ~ンピンポ~ンピンポンピンポンピンポン♪
「だーーっ!うるさいっ!近所迷惑だろ。1回鳴らせばまだ耳は達者だから聞こえると何度も言ってるだろうが!」
不機嫌丸出しの彼女の表情に安心する。
「そっちの声の方が近所迷惑よ~。それよりも天気も良いし映画でも見に行きましょうよ~。今から出るとなると先にどこかでお昼ご飯食べたほうが良いかしら。あ、それともどこか公園でも散歩する?見せたい場所があるのよねえ」と半ば強引にかすみを外に連れ出した。
「どこに行くんだ」とか「家に帰せ」とか聞こえたけれど聞こえない振りをして彼女の手を引っ張っていく。映画も散歩も外に連れ出すただの口実。
かすみの家から歩いて5分程と言う近い場所にそれはあった。
「ねえ。これ見て」と指さすは小さな空き地。
小さな雑草がたくさん生えている何の変哲も無いただの空き地を見て不思議そうにこちらを見ている。
「良く見てよ。あれよあれ」と言うとそれに向かって歩いていく彼女の後姿を見守った。
きっとまじまじとそれを見ているだろうかすみは突然背中を震わせ笑いだした。
「おまっ、これっ」と言葉にならない言葉を吐き出しながら大笑いのかすみの姿を見て久々に心からの笑顔を見る事が出来たうれしさに一瞬かける言葉を失った。ずっとこんな笑顔を見たかった。これからはいつでもこの笑顔を見せてくれるだろうと信じている。
心の中にあった硬い結び目が融けて無くなった瞬間だった。
「気に入ってくれた?」と聞くと「そうだな。相変わらずびっくり箱みたいだなあ」と涙を拭っている。「あげるわよ。それ」というと
「え?」と聞き返してくるきょとんとした顔が可愛い。
「さて。このまま帰る?それとも散歩でもする?映画も良いわよねえ。どうする?」と聞くと「近所を散歩したい」というリクエストにその場を後にした。
その空き地に真ん中には小さな木製の白い横長の看板があった。
『中々良い物を扱ってそうだな共和国建設予定地』
また今まで通りの休日が繰り返される。 了
********
完結です。
私自身いろいろありまして、、、。
PCがクラッシュしましてねえ(泣)、データーはバックアップ取ってあったから良かったけれど気力までも無くなりまして更新が遅くなりました。
最後は一番初めの三題話へと戻る形で終わらせていただきました。
最初から読んで頂いた方には感謝感謝です。
半年以上一つの作品に関わったのはこれが初めてでした。
自分自身、読み返す勇気はまだ持てずにいました。
今は、、、今も、、ですけど。。。
とある休日はこれでおしまいです。ありがとうございましたm(__)m
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